今回は、2022年に登場した至高のマニュアルフォーカスレンズ、Voigtlander NOKTON 50mm F1 Aspherical RF を愛機 EOS R5 に装着して撮影したスナップの作例を紹介します。
雨上がりの野毛。しっとりと濡れた街並みを、今回も開放1.0、未編集のJPEG撮って出しで切り取りました。レンズが捉えたそのままの描写をご覧ください。
野毛こうじ
日中の雨上がり、野毛こうじの一本道を真っ正面から撮影した風景的なショットです。 ピントは50mほど先に合わせていますが、開放1.0というスペックにおいては、この距離でもパンフォーカス(画面全体にピントが合う状態)にすることは極めて困難です。
結果として、50m先の解像感を確認できる一方で、手前にも奥にも明確なボケが生じています。風景撮影であっても全域をシャープに収めきらせない、このレンズ特有の描写特性が表れた一枚となりました。

ジャズと演歌のpapajohn
歴史を感じさせるお店の看板を、正面から捉えました。 奥行きのない平面的な構図のためボケはありませんが、その分、開放1.0における看板の質感描写や、四隅の周辺減光、そして画面全体に漂うレトロな空気感を確認できるショットになりました。

少し早い梅の開花
黒い背景の中に、ひっそりと咲く一輪の梅を見つけました。 このレンズの最短撮影距離は0.45m。花を大きく引き寄せて撮ることはできません。しかし、あえて「ポツンと一輪」という余白を持たせて配置することで、雨上がりの静寂の中に佇む梅の力強さを表現しました。寄れないという制約を、表現の糧に変える試みです。

イワシフライ単品
村田家のイワシフライを最短撮影距離付近で捉えました。 写真の中でボケが占める面積が非常に多くなるため、衣のどの一点にピントを置くか、そのわずかな差を追い込んで撮影する過程そのものにマニュアルフォーカスの楽しさが凝縮されています。

イワシフライ定食(全体)
続いて、定食全体を俯瞰気味に捉えた一枚です。 こちらもアップ同様、被写界深度が極めて浅いため、食卓の奥行きの中でピント位置を慎重に選ぶ必要があります。開放1.0が作り出す圧倒的なボケの海の中に、定食という日常が浮かび上がる光景を記録しました。

フライの脇役(ソース)
イワシフライに欠かせないソース。 料理と共に差し出されたその容器とソースを、メイン料理と同じ比重で描写しました。深いボケの中で輪郭が浮き上がり、ちょうどその時、今日一番の光を捉えることができました。今回の撮影を締めくくるベストショットです。

撮影機材・撮影設定
- レンズ:Voigtlander NOKTON 50mm F1 Aspherical RFマウント(開放f1.0撮影)
- ボディ:CANON EOS R5(JPEG撮って出し)
- 測光:スポット測光
- ホワイトバランス:オート
- ピクチャースタイル:ニュートラル
まとめ
今回のスナップでは、開放1.0というスペックが単に「背景をボかすためだけのものではない」という事実を再確認しました。
野毛こうじでの、遠景であってもパンフォーカスを許さない独特の被写界深度。papajohnで見せた周辺減光を伴うレトロな質感。そして、イワシフライの撮影で見せる、ボケを制御してピント位置を追い込む楽しさ。 一つのレンズが持つ多様な表情を、ありのままに記録することができました。
今後も、特定の被写体に偏ることなく、このレンズが描き出す多様な世界を一つひとつの作例として積み重ねてまいります。
店舗情報
製品紹介(コシナ公式動画)
今回使用したレンズの技術的な背景や、メーカーによる詳細な解説をご覧いただけます。 描写の特性をより深く知りたい方は、こちらの公式動画も併せて参考にしてください。