今回は、2022年に登場した「Voigtlander NOKTON 50mm F1 Aspherical RF」を愛機の EOS R5 に装着して撮影した作例を紹介します。
本日は、開放1.0という極限の世界を、一切の加工を排した「JPEG撮って出し」の画像でご堪能ください。デジタル処理に頼ることなく、レンズとカメラが紡ぎ出すそのままの空気感をお届けします。
横浜駅近く、昭和から続くラーメン マリモ。開放1.0の薄いピントが、店の佇まいを現代の空気から鮮やかに切り離します。EOS R5 が、加工なしにその場の質感を定着させる入り口です。
店構えと赤い傘
このレンズは、開放1.0においてネオンなどの強い光源に対して独特の「滲み」や「光の輪郭の崩れ」が顕著に現れます。現代的なレンズのようなクリーンな描写は不得意であり、正直に言えば、私個人はこの描写を好きにはなれません。今後もその評価が変わることはないでしょう。
もちろん、絞れば解消しますし、気になる場合はRAWで撮影してLightroom等の編集ソフトでフリンジを消去することもできます。しかし、今回はこのレンズの素顔を提示するため、あえて未処理のまま掲載しています。

壁掛けメニューに宿る時間
斜めからレンズを向け、注文するモヤシラーメンにピントを置き、商品情報を写真の中に埋め込みました。注文した商品をボケで表現しています。それにしても、店内の照明と開放1.0のボケが混ざり合う様は、非常に美しいものです。

脇役(生ニンニク)
主役のラーメンを待つ間、目の前にある生ニンニクの容器にレンズを向けました。なんでもない小物が光の粒に包まれ、背景から静かに溶け出します。
ここで注目していただきたいのは、容器の蓋の「赤」です。店前で撮影した看板の赤とは全く異なる描写。深いボケと合わさることで、開放1.0のこのレンズでしか描けない、静謐なシーンを作り出すことができました。

メイン料理(モヤシラーメン)
届いた一杯。頂点のモヤシ一点にのみフォーカスし、他をすべて光の海へ溶かしました。無加工の EOS R5 が捉えた、脂の輝きと湯気の気配。食欲とレンズの描写力が最高潮で重なった、一つの到達点です。
モヤシラーメンのシンボルであるモヤシの、その細かな質感を見事に描写することができました。

サブ料理(餃子)
主役を支える餃子。その焼き目の質感を、同じく開放1.0で捉えます。極端なスペックを持つレンズを、日常の食事で普通に使い切る。
ここでは背景にこだわりました。赤いテーブルと周辺減光、そして開放1.0のボケを組み合わせ、見事なグラデーションを描写。そのために、餃子のピントをあえて後ろに置き、背景の色味を活かした納得の一枚です。

爪楊枝
今回の食事の最後を締め括ったのは、一本の爪楊枝。可愛らしい容器と爪楊枝のどちらにピントを合わせるか悩みましたが、ここでの主役は爪楊枝だと決めました。
一点に集中し、この撮影を完結させる。ただ好きなものを食い、このレンズで撮り切ったという揺るぎない事実がここにあります。

撮影機材・撮影設定
- レンズ:Voigtlander NOKTON 50mm F1 Aspherical RFマウント(開放f1.0撮影)
- ボディ:CANON EOS R5(JPEG撮って出し)
- 測光:スポット測光
- ホワイトバランス:オート
- ピクチャースタイル:ニュートラル
まとめ
今回ご紹介した写真は、すべてデジタル処理を介さない「JPEG撮って出し」です。
なぜ、あえて無加工にこだわるのか。それは、このレンズが持つありのままの真実を、誤魔化しなくお届けしたいからです。開放1.0で見られる滲みや周辺減光は、ある側面では欠点かもしれません。しかし、それを取り除く手法(絞りの調整やLightroomでの処理)を知った上で、あえてそのままを受け入れる。その選択肢こそが、写真の面白さだと考えています。
「週末の焦点距離」では、これからも一本のレンズと向き合い、そのレンズでしか見えない世界を積み重ねていきます。この記録が、あなたの機材選びや撮影体験の静かなヒントになれば幸いです。
店舗情報
製品紹介(コシナ公式動画)
今回使用したレンズの技術的な背景や、メーカーによる詳細な解説をご覧いただけます。 描写の特性をより深く知りたい方は、こちらの公式動画も併せて参考にしてください。