動物系100%の濃厚スープで知られる「天金」。昼の老舗対決を経て、夜の帷が下りた旭川で挑んだ第2戦。醤油の輪郭が際立つ力強い味わいに期待が高まるも、そこには意外な落とし穴が待っていた。温度が味に与える影響と、旅先での一期一会の難しさを振り返る。
満席のリング、チャーシューメンでの武装
旭川ラーメン3番勝負、2日目の第2戦。 昼の「青葉」で見せつけられた「老舗の凄み」という強烈なパンチの余韻が残る中、夜の帳が下りた旭川の街へ再び繰り出す。
次なる対戦相手は、動物系スープ100%の使い手として名高い「らーめんや天金 四条店」。家系育ちの私にとって、最も噛み合いそうな相手だ。19時のゴールデンタイム。幸運にも行列はなく、すんなりとリング(店内)へ上がることができた。だが、客席は満員。活気に満ちたアウェイの空気だ。
ここで私は、勝利を確実にするための最強のカードを切ることにした。「チャーシューメン(醤油)」、価格は1,300円。 通常よりも肉を増量し、脂と旨味の援護射撃を得て、この老舗を攻略する算段だ。

致命的な「ぬるさ」による、まさかの秒殺KO
ゴングが鳴り、着丼した瞬間、見た目のテンションは最高潮に達した。 丼を覆い尽くす肉の壁。懸念していたラードの過剰な重さはなく、スープとの比率も美しい。
だが、スープを一口啜った瞬間、私のガードは無防備に砕け散った。 「……ぬるい」。
本来なら熱々で提供されるべきスープが、驚くほど生ぬるいのだ。昼に食べた「青葉」が、油の蓋で最後まで熱を逃さなかったのに対し、こちらは冬の寒空の下で放置されたかのような頼りなさ。
原因はおそらく、私が頼んだチャーシューだ。大量に盛られた冷たい肉が、スープの熱を一気に奪い去ってしまったのだろうか。だとしても、これは致命的だ。
醤油のキレや動物系のパンチを感じる以前に、ラーメンとしての生命線である「温度」が死んでいる。チャーシューメンという武装が仇となり、まさかの自爆。開始早々、戦意を喪失するほどのKO負けを喫した。
「高級ハム」の孤立と、見出してしまった正解
朦朧とする意識の中で、敗因となったチャーシューを噛み締める。 その正体は、スーパーの安物などではない。しっとりとした食感、上品な塩気、まるでギフト用の「高級ハム」のような素晴らしい仕上がりだ。
単体で食べれば間違いなく美味い。だが、このリング(醤油ラーメン)においては、完全に浮いている。
濃厚な醤油スープと、上品な高級ハムが互いに主張し合い、手を取り合うことがない。全体としてのバランスが崩壊しており、食べていてちぐはぐな印象が拭えないのだ。
ここで一つの確信めいた考えが頭をよぎる。「この高級ハムは、絶対に塩ラーメンのリングでこそ輝くはずだ」。 醤油の雑味がないクリアな塩スープなら、この繊細な肉の旨味が活きたに違いない。
皮肉にも、醤油ラーメンを食べながら「塩ラーメンの具材としての可能性」を感じてしまった瞬間、この勝負の敗北は決定的なものとなった。
旭川らしさの欠如、そして消化不良の結末
食べ終えた後に残ったのは、満腹感ではなく、消化不良のモヤモヤ感だった。 昼の青葉で感じた「これぞ旭川ラーメン」という強烈なアイデンティティや、雪国ならではの知恵(熱さ)が、ここには欠けている。
1,300円というファイトマネーを払い、期待値を上げて挑んだ分、その落下ダメージは大きい。 チャーシューメンという有利な状況を作りながら、温度管理とバランスという基本にして最大の隙を突かれた一戦。 私の完敗だ。ごちそうさまでした。
店舗情報
| 店名 | らーめんや天金 四条店 |
|---|---|
| 住所 | 北海道旭川市四条通9-1704-31 |
| アクセス | JR旭川駅から徒歩約10分 |
| 営業時間 | 11:00~15:00 / 16:30~20:00 |
| 定休日 | 火曜日 |
| 駐車場 | あり(店舗隣に専用駐車場) |