旭川四天王制覇の欲に駆られ、満腹のなか強行した「山頭火」への訪問。しかし、そこで待っていたのは旅の最後を飾るにはあまりに悲劇的な体験だった。のびきった麺、理解に苦しむトッピング。名店という看板の裏側に潜む「蛇足」が招いた、後悔の記録を綴る。
満腹の向こう側にある「蛇足」
旭川ラーメン四天王の一角「山頭火」。旅の締めくくりに空港で選んだその一杯は、期待を大きく裏切る悲劇の始まりだった。オペレーションの乱れ、のびきった麺、そして理解に苦しむスープの甘み。名店という看板に踊らされ、満腹のなかで強行した「蛇足」が招いた、後悔の記録をここに綴る。
隣の「梅光軒」で、味噌・バター・コーンに挽肉ともやしを加えた無敵武装の一杯を平らげ、お腹も心も満たされていた。 しかし、搭乗時刻までまだ少し時間がある。目の前には、全国的な知名度を誇る「らーめん山頭火」の看板。 「ここまで来て、四天王の一角を食べずに帰れるか?」
そんな安っぽいコレクター魂と、満腹中枢が麻痺した勢いが、私を最悪の判断へと導いた。これが今回の旅、最大のミステイクとなる。 選んだのは、創業以来の看板メニューだという「しおらーめん(1,000円)」。 梅光軒の余韻を消さない程度の、軽いデザート感覚で平らげるつもりだった。

15分の焦燥と、理解不能なトッピング
まず、オペレーションに難がある。 フードコートというスピードが命の場所で、注文から提供まで15分。フライト時間が迫る中、この待ち時間は永遠にも感じるストレスだ。
ようやく手元のベルが鳴り、受け取った丼を見て首を傾げる。白濁したスープに鎮座するのは、カリカリ梅とキクラゲ。 まるで博多の豚骨ラーメンの真似事のような構成だ。塩ラーメン特有の繊細な出汁感を求めていた私にとって、この「カリカリ梅」はノイズでしかない。「なぜ乗せた?」という疑問が、食べる前から脳裏をよぎる。
塩の概念を覆す濁りと、不自然な甘み
気を取り直してスープを一口。その瞬間、初日に食べた名店「すがわら」の記憶がフラッシュバックした。 あの透明感の高いクリアなスープこそが、塩ラーメンの真髄だった。対して、この山頭火はどうだ。 白濁させたスープで勝負を挑んでいるようだが、口に残るのは妙な「甘み」だけ。出汁の深みではなく、「何を混ぜ合わせたらこういう味になるのか?」と勘ぐってしまうような、得体の知れない気持ち悪さが舌に残る。
さらに最悪なのが麺だ。完全にのびきっており、コシも香りもない「死んだ麺」。 なぜこれほど麺が死んでいたのか。その理由は、調理風景を目視して明らかになった。 厨房に立つスタッフの手つきが、明らかに不慣れなのだ。茹で上がった麺をスープに入れてから、トッピングが完了するまで、優に2分近くかかっている。 麺は生き物だ。その2分のロスがどれほど致命的か。看板を背負う以上、プロに作っていただきたいと切に願う。
皮肉なことに、メンマのコリコリとした食感だけは今回の旅で最高クラスだった。その一点の輝きが、逆に全体のチグハグさを残酷なまでに際立たせている。
「死んだ麺」を生んだ、素人作業の代償
有名店、看板メニュー、四天王。そんな言葉に踊らされた結果、最後に出会ったのは「もう二度と食べることはない」と確信させる一杯だった。 基本的には、隣の梅光軒に行くことを強くおすすめする。
だが、もしあなたが二人組で空港にいるのなら、ある種の「エンターテインメント」として利用する手はある。 一人が梅光軒の無敵味噌ラーメン(天国)を、もう一人がこの山頭火(地獄)を頼み、シェアして食べるのだ。その圧倒的な落差を味わうことで、怖いもの見たさの好奇心は満たされるだろう。 私の口には合わなかったが、読者の中にはこの独特な甘みが好みという人がいるかもしれない。旅の最後に一か八かの博打を打ちたいなら、止めはしない。ごちそうさまでした。
店舗情報
| 店名 | らーめん山頭火 旭川空港店 |
|---|---|
| 住所 | 北海道上川郡東神楽町東2線16-98 旭川空港 2F |
| 場所 | 旭川空港ターミナルビル 2F フードコート |
| 営業時間 | 11:00~20:00(L.O. 19:30) |
| 定休日 | 無休 |
| 支払い | 現金・カード・電子マネー可 |