横浜の家系育ちが挑む、透明な未知との遭遇
旭川空港に降り立ち、いよいよ「旭川ラーメン3番勝負」の幕開けだ。 初日の対戦相手は、旭川塩ラーメンの絶対王者として名高い「ラーメン すがわら 本店」。
今回の遠征拠点「ドーミーイン旭川」に荷物を放り込み、すぐに防寒着を整え、氷点下の雪が舞う街へ繰り出した。ホテルから店舗までは徒歩わずか3分。雪を踏みしめながらリング(店舗)へ向かうこの道のりも、これから始まる真剣勝負(実食)への集中力を高めるための重要な儀式と言える。
暖簾をくぐると、そこは剥き出しのコンクリート床と昭和レトロな内装が広がる空間だった。 ここで正直に告白しよう。私は横浜出身、濃厚な豚骨醤油の「家系ラーメン」に育てられた人間だ。濁ったスープこそがラーメンだと刷り込まれている。そんな私が、アウェイの地でこの昭和レトロな空間に立ち、これから対峙する未知の透明なスープに、武者震いにも似た戸惑いを隠せないでいた。
だが、賽は投げられた。券売機で選んだ「塩ラーメン」と「コーン」の食券を渡し、リング中央で対戦相手を待つ。そして、ついにその瞬間が訪れた。

ラードの事前情報に良い意味での「拍子抜け」
いざゴングが鳴り、着丼した瞬間、まず目を奪われたのはそのスープの透明度だ。底まで透けて見える美しい黄金色のスープが、静かにこちらの出方を伺っている。家系の濁流に慣れた私の目には、あまりにも神々しく、そして異質に映る。
実は対戦前、「旭川ラーメンらしくラードが多めで表面が覆われている」という事前情報を得ており、ヘビーな立ち上がりを警戒していた。しかし、一口すすってみて良い意味で拍子抜けした。
ラードの重さは微塵も感じさせず、驚くほどクリアでキレのある味わいだったのだ。具体的な出汁の正体を探る暇すら与えず、研ぎ澄まされた塩気と旨みがダイレクトに味蕾を刺激してくる。事前の予想を裏切るこの軽やかさと深みのギャップに、開始早々、完全に主導権を握られた感覚だ。
国民的レジェンドと通ずる「粉っぽさ」の美学
麺とスープの相性を確認する中盤戦、ここで驚くべき発見があった。 個人的な感想だが、この麺の食感とスープの方向性が、あの国民的ロングセラー「サッポロ一番塩ラーメン」に似ていると感じたのだ。
特に印象的だったのが、麺に残る独特の「粉っぽさ」だ。低加水麺特有の小麦のザラつきが、あのインスタント麺の食感を彷彿とさせる。もちろん、これはネガティブな意味ではない。慣れ親しんだ「完成された味」の世界観に対し、プロが厳選した生鮮食材と技術で真っ向勝負を挑み、さらに高みへと昇華させた味わいだ。
インスタントの最高傑作と、職人の本気の一杯が、互いに高め合うようなハイレベルな攻防を口の中で楽しむことができた。
噛み応えのある肉壁とコーンの援護射撃
終盤は、トッピングたちとの総力戦となる。 チャーシューは、最近流行りの軟弱なトロトロ系とは一線を画す、しっかりとした肉質を感じさせる仕上がりだった。噛めば噛むほど肉本来の旨みが溢れ出す硬派なスタイルは、こちらの顎を試してくるようなタフな相手だ。
そこに加わるのが、追加トッピングしたコーンである。塩気が効いたスープの中で弾けるコーンの甘みは、戦いの合間の癒やしであると同時に、プチプチとした食感で食欲を加速させる強力な援護射撃となった。
結果、スープの一滴も残さず完食。価格以上の満足感と、家系とは異なるベクトルの強さに打ちのめされ、心地よい敗北感を味わった。旭川ラーメンの実力、恐るべし。初日から最高の一杯に出会うことができた。ごちそうさまでした。
今回の対戦データ
| 店名 | ラーメン すがわら 本店 |
|---|---|
| 住所 | 北海道旭川市7条通7丁目右32 七福ビル 1F |
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