醤油3連戦の最終戦は、駅前ビル地下の名店「梅光軒」。連食で消耗した胃袋を迎え撃つのは、香り高い麺と圧倒的な存在感を放つ極太メンマ。醤油、出汁、麺の三位一体が織りなすバランスの妙。旅のハイライトに相応しい、納得の一杯に出会えた喜びを記録する。
地下への階段で待つ、3戦目の安息
醤油ラーメン3本勝負、いよいよ最終戦(3戦目)。 昼のカルチャーショック、夜の温度差による敗北を経て、私の舌と胃袋は少なからず消耗していた。 最後に選んだのは、旭川駅前のビル地下に店を構える「梅光軒 旭川本店」。
時刻は19時半。地下へと続く階段には行列ができている。だが、氷点下の屋外で待つことに比べれば、暖房の効いた屋内で待てることは最高の贅沢だ。 「今日だけで醤油ラーメン3杯目」。 自らの暴挙に胃袋が悲鳴を上げないか不安がよぎる中、ついにその順番が巡ってきた。オーダーしたのは基本の「醤油ラーメン」。価格は1,030円。

慣れ親しんだ「横浜」の幻影と納得のバランス
着丼し、まずはスープを一口。その瞬間、張り詰めていた緊張の糸が解け、心の中で膝を打った。 「……これだ。この味を知っている」。
誤解を恐れずに言えば、これは私が横浜で慣れ親しんだ家系ラーメン、それもバランス型で知られる「たかさご家」のスープに近い感覚だ。 もちろん豚骨醤油と旭川醤油の違いはある。だが、動物系のコクと醤油のキレが突出することなく、円いバランスで融合している点が酷似しているのだ。
他店で感じたような、油で蓋をする独特の旭川スタイル(=ご当地らしさ)とは少し違う。しかし、家系育ちの私のDNAには、この「程よいパンチと安心感」が痛いほど響く。3杯目というハンデをものともせず、スープが身体に染み渡っていく。
視覚を圧倒する「極太メンマ」の正体
この店を語る上で避けて通れないのが、名物のメンマだ。 丼の中で異様な存在感を放つそれは、一般的なメンマの数倍はあろうかという巨大な四角柱。これほど太いメンマにお目にかかることは、全国を見渡しても稀だろう。
箸で持ち上げるとずしりと重く、視覚的なインパクトは今回の旅でナンバーワンだ。 ただ、味と食感に関しては、見た目ほどの凶暴さはない。拍子抜けするほど味付けは薄く、食感も「普通」のメンマに近い。もっと繊維質でゴリゴリとした歯ごたえを期待していただけに、少し惜しい気もする。だが、この圧倒的なビジュアルを見せつけられれば、細かな味の感想など野暮というものだろう。
最後まで寄り添う「ネギ」の誠実さと、個人的な「正解」
特筆すべきは、麺の香りと、具材の誠実さだ。 特に感動したのは「ネギ」である。メニュー写真では山盛りでも、実物は貧弱という店が多い中、ここは写真に偽りがない。たっぷりと盛られたネギは、麺を食べ終えた後も丼の中にしっかりと残っている。
レンゲでスープを啜る際、このシャキシャキとしたネギが必ず一緒についてくるのだ。ネギ好きにはたまらない配慮であり、スープのコクとネギの清涼感が最後まで続く。この計算されたバランスが、食べ終わった後の満足感を最高潮に高めてくれた。
ここで一つ、読者に誤解のないよう伝えておきたい。 「最も旭川らしいラーメン」を求めるなら、間違いなく昼に行った老舗こそが正解だ。あそこには旭川の歴史と風土が詰まっている。 しかし、横浜の家系ラーメンで育った私が、個人的な好みで「一番ウマい」と感じたのは、この梅光軒だった。 それは単に、食べ慣れた味の構成に近かったからに過ぎないかもしれない。だが、旅の疲れを癒やしてくれたのは、教科書通りのご当地ラーメンではなく、このバランスの取れた一杯だった。ごちそうさまでした。
店舗情報
| 店名 | 梅光軒 旭川本店 |
|---|---|
| 住所 | 北海道旭川市2条通8 ピアザビルB1F |
| アクセス | JR旭川駅から徒歩約3分(買物公園通り沿い) |
| 営業時間 | 11:00~15:30 / 17:00~20:00 |
| 定休日 | 不定休 |
| 駐車場 | なし(近隣にコインパーキングあり) |